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研究書(文学系) 詳細

9784838608089

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王朝物語史的創造考

―平安後期・末期における主人公と先行物語〈引用〉―
書名かな おうちょうものがたりしてきそうぞうこう―へいあんこうき・まっきにおけるしゅじんこうとせんこうものがたり〈いんよう〉
著者(編者)名 松浦 あゆみ 著
著者(編者)名かな まつうらあゆみ
ISBNコード 978-4-8386-0808-9
本体価格 11,500円
税込価格 12,650円
判型 A5判上製カバー装
頁数 398頁
刊行日 2025年8月4日

『源氏物語』以後の王朝物語の再評価を試みる

 本書では、平安時代後期物語『浜松中納言物語』、及び平安時代最末期物語『松浦宮物語』・『有明の別れ』を論の対象として、各題材による物語展開・作品構造を決定づける諸要因について考察する。その際、物語展開・作品構造を大きく決定づける存在として、とりわけ作品の中心で活躍するいわゆる主人公の言動・心情と先行物語〈引用〉を主に論じていく。
(中略)〈主人公〉と先行物語〈引用〉、文化・社会をめぐる物語史的創造の魅力的な内訳を提示したい。――序論より抜粋



 序論 平安時代後期・末期物語の主人公と先行物語
      〈引用〉、文化・社会
                ─諸物語展開を決定づける諸要素をめぐる検討─

Ⅰ部 『浜松中納言物語』の王朝物語史的創造考⑴
     ─男主人公と物語展開を決定づける
      『源氏物語』〈引用〉と言語表現・史的位相─

 第一章 『浜松中納言物語』の〈渡唐体験〉考
     ─見聞する男主人公中納言と『
       源氏物語』〈引用〉─
  はじめに─渡唐のあり方を決定づける
        『源氏物語』〈引用〉─
  一、唐土の後宮事情と見聞する男主人公の環境における
     〈時代差〉
  二、唐土の客人としての光源氏的時代〈体験〉
  三、唐后の「本体」見聞から見出された宿縁
  四、唐后の美質を語る価値をめぐる葛藤
  五、〈前代のゆゑ〉の見聞という〈渡唐体験〉
  おわりに代えて─唐土から日本へと展開する唐后の
          〈ゆゑ〉の追求─

 第二章 『浜松中納言物語』渡唐中の恋をめぐる
       和歌の役割考
                ─「みつの浜松」〈題号由来歌〉と
       「波の上の」詠─
  はじめに
  一、渡唐中の恋歌の役割をめぐる問題点と研究史概観
   ⑴渡唐巻巻一における恋の歌概観
   ⑵「みつの浜松」〈題号由来歌〉における〈歌の場〉の
     二重性
   ⑶唐后をめぐる恋の歌概観と「波の上」詠
  二、「波の上の」詠をめぐる〈歌の場〉の人物・詠歌
     事情の検討
  三、「波の上の」詠における該当人物・歌意の検討
  四、作品全体における〈予見する后〉詠としての役割
  おわりに─男主人公の羈旅中の恋を導く作中和歌の役割─

 第三章 『浜松中納言物語』における大弐の史的位相と
      役割考
                ─男主人公の渡唐・唐后思慕と〈女の物語〉─
  はじめに─役割としての大弐─
 前編 『浜松中納言物語』における大弐の史的位相考
  一、巻二登場の大弐の謎─概観と問題の所在─
  二、歴史上の官位との比較から読み取れる作中のあり方
  三、他の物語との比較から読み取れる作中の意味合い
  前編小結
 後編 『浜松中納言物語』における大弐の日唐双方向の
     役割考
  一、大弐の卑下を基底とした男主人公の言いつくろい
  二、恋の〈噂〉を恐れる男主人公と筑紫/唐土
  三、大弐と唐土からの送使「宰相」をめぐる作品構造
  後編小結
  おわりに─大弐の日唐双方向の役割─

Ⅱ部 『浜松中納言物語』の王朝物語史的創造考⑵
  ─男主人公帰国後の唐后思慕・〈ゆかり〉と語りの情動─

 第一章 『浜松中納言物語』男主人公の言いつくろい考
                ─帰国後の唐后所生若君の処遇・素姓説明と語りの
       情動─
  はじめに
 前編 若君の処遇・素姓説明をめぐる男主人公の
     言いつくろい考
  一、若君の処遇概観と問題の所在
  二、帰国後の生活における若君の処遇・素姓説明の特徴
  三、唐后の〈ゆかり〉若君への心情
  四、若君を託す唐后の〈ゆかり〉選択のあり方
  五、吉野姫君へ若君を託す際の語りの情動
  前編小結
 後編 若君の処遇・素姓説明をめぐる作品構造考
  一、巻五の兵部卿宮の吉野姫君盗み出しをめぐる
     問題提起と作品概観
  二、巻四の〈若君の母〉吉野姫君を取り巻く京の
     社会の思惑
  三、巻五の男主人公の京の生活秩序〈是正〉と若君
  後編小結
  おわりに─帰国後の若君をめぐる語らいの情動と
        吉野姫君─

 第二章 『浜松中納言物語』巻三考
                ─〈御前の唐語り〉と語る男主人公の唐后思慕の
       特質─
  はじめに─巻三の京・吉野の二物語系列の関連性と
        唐后思慕─
  一、大将大君への語らいの変化をめぐる問題提起
  二、〈御前の唐語り〉以前の唐后思慕における閉塞性
  三、〈御前の唐語り〉で求められる唐后の語る価値
  四、〈御前の唐語り〉の内実と唐后思慕の変質
  おわりに─巻三における唐后思慕の特質と物語史的位相─

 第三章 『浜松中納言物語』唐后の〈ゆかり〉への援助の
      必然性小考
                ─巻三の「もし世におはすることもこそとて、
       言づけ給ふもの……」の解釈─
  はじめに─唐后の〈ゆかり〉に関する男主人公の
        心情検討の意義─
  一、吉野山初訪問時の唐后の言伝け回想をめぐる
      解釈の問題
  二、聞き手の存在と「もこそ」文の検討
   ⑴唐后の言伝けの相手と聞き手との兼ね合い
   ⑵「もこそ」文で示される唐后の心情と
     「言づけ給ふもの」の内容
  三、「あてはかに思ひまさる」男主人公の心情検討
  おわりに─姉妹への援助をめぐる唐后思慕の文脈と
        仏教的必然性─

Ⅲ部 『松浦宮物語』の王朝物語史的創造考
  ─平安最末期物語の先行物語〈引用〉と
    〈主人公〉をめぐる目論み⑴─

 第一章 『松浦宮物語』における〈破綻〉の方法考
                ─『浜松中納言物語』を前提とした再構成検証─
  はじめに─結末部における従来の
       〈構想破綻説〉への疑問─
  一、『浜松中納言物語』変奏と〈構想破綻説〉をめぐる
      問題の所在
  二、〈あくがるる〉恋からあやにくさを自覚した
     〝破綻〟へ
  三、〈琴をめぐる宿世〉の構造検証
  四、男主人公の恋における鄧皇后の統制の意味
  おわりに

 第二章 『松浦宮物語』の〈血の涙〉表現をめぐる
       作品構造考
                ─渡唐における『うつほ物語』〈引用〉の重なり─
  はじめに
  一、『うつほ物語』〈引用〉の概観・本文異同による
      享受の問題の所在
  二、「血の涙」「紅の涙」等関連表現における
      『うつほ物語』享受
  三、作品の特質としての孝養と恋の重なり方
  おわりに─結論に代えて─

Ⅳ部 『有明の別れ』の王朝物語史的創造考
  ─平安最末期物語の先行物語〈引用〉と
    〈主人公〉をめぐる目論み⑵─

 第一章 『有明の別れ』における男装の姫君の
      〈笛の別れ〉考
                ─『古とりかへばや』・『今とりかへばや』
       〈引用〉をめぐる物語史的位相─
  はじめに─男装の姫君の三物語における
       〈笛の別れ〉場面─
 前編 〈笛の別れ〉をめぐる作品全体と男装時の
      『今とりかへばや』〈引用〉考
  一、男装の物語展開全体における
     『今とりかへばや』〈引用〉概観
  二、男装への心情と〈笛の別れ〉をめぐる
     『今とりかへばや』〈引用〉概観
  三、〈笛の別れ〉諸場面における
     『今とりかへばや』との対応概観
  四、〈笛の別れ〉場面比較⑴心強き/心細き心情の対照性
  五、〈笛の別れ〉場面比較⑵公的な披露時の言動・心情と
     〈天女性喪失〉
  前編小結
 後編 男装解除後の〈笛の別れ〉における
     『古とりかへばや』〈引用〉考
  一、男装解除後の「笛竹」歌の
     『古とりかへばや』歌との近似性
  二、〈笛の別れ〉諸場面における
     『古とりかへばや』〈引用〉
  三、三物語の〈笛の別れ〉変容
     ─『とりかへばや』両本の対応場面から─
  後編小結
  おわりに─『有明の別れ』の〈笛の別れ〉の
        文学史的位相─

 第二章 『有明の別れ』の笙の笛考
                ─楽の奇瑞と成立期の神仙譚愛好との関連から─
  はじめに─超常的な〈笛〉の種類をめぐる問題提起─
  一、女右大将の笙の笛をめぐる諸背景検討
   ⑴物語文学史における笙の笛
   ⑵記録類にみられる笙の笛
  二、「なにがしの月影に山に上りける人」と
      笙の笛の神仙譚
  三、三位中将の笙の笛をめぐる以後の展開検討
   ⑴三位中将と〈右大将おはせぬ嘆き〉
   ⑵笙の笛と〈左大将の族〉
  おわりに─今後の課題─
 【補論】『有明の別れ』巻一の「なにがしの月影に山に
       上りける人」再考

 第三章 『有明の別れ』における〈男主人公〉の
       出生の秘密考
                ─『源氏物語』の叙述方法〈引用〉による
       作品後半の構造─
  はじめに
  一、〈左大臣が出生の秘密を知るまでの物語展開〉の
      問題の所在
  二、巻二の役割─作品前半の後日譚における
     〈後継主人公を騙る〉構造─
  三、巻二から巻三へ─〈類例〉異父妹中宮への
      出生告白における転換点─
  四、巻三の役割─〈光〉の継承者東宮よりも
     〝貶め〟られる左大臣─
  おわりに─結論に代えて─

 第四章 『有明の別れ』における『狭衣物語』〈引用〉試考
                ─〈主人公〉をめぐる作品後半の問題提起─
  はじめに
  一、『狭衣物語』〈引用〉をめぐる構造と問題点概観
  二、巻三末尾近くの東宮の嵯峨行啓検討
  三、巻二はじめの左大臣の愛執と好色検討⑴
      ─〈引用〉要素の概観─
  四、巻二はじめの左大臣の愛執と好色検討⑵
      ─出生の秘密との兼ね合い方─
  五、〈主人公〉をめぐる装置としての
     『狭衣物語』〈引用〉
  おわりに

 第五章 『有明の別れ』の〈末尾歌〉試考
                ─本文校訂・歌意、作品内容との
       関わりをめぐって─
  はじめに
  一、校訂本文の確定
  二、歌ことば「思ひ入る(野)」の検討
  三、「思ひ入る」物語和歌との比較からみた性格
  四、歌ことば「野寺」の検討
  五、慈円の「有明の」歌との関連性検討
  六、慈円の「有明の」歌摂取で想定される意図
  おわりに─〈末尾歌〉の歌意・意図をめぐる可能性─

結論 平安時代後期・末期物語の主人公を規定する諸要素

 初出一覧
 あとがき
 作品本文重要語句・関連記述索引

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